世界と日本の視力矯正市場:データから読み解く「日本だけ」が取り残されている近視矯正手術の現状

世界と日本の視力矯正市場:データから読み解く「日本だけ」が取り残されている近視矯正手術の現状
世界と日本の視力矯正市場:データから読み解く「日本だけ」が取り残されている近視矯正手術の現状

現在、世界、特に日本と韓国を含む東アジアは、かつてない規模の「近視パンデミック」に直面しています。しかし、その解決策となる屈折矯正手術(レーシック、ICL、SMILE Proなど)の普及状況を詳細に分析すると、日本市場の「極めて歪な構造」が浮き彫りになります。

なぜ日本人はこれほどまでに視力の悩みを抱えながら、手術に踏み切れないのか。そして、なぜ世界標準からかけ離れた術式選択が行われているのか。最新の統計データと医学的根拠に基づき、その真実を徹底解説します。

1. 爆発的に増加する近視人口と、日本の「沈黙」

まず、日本・韓国・アメリカの18歳から35歳までの世代における、近視の広がりと手術の普及率を比較します。ここですでに、日本の特殊な現状が数字として現れています。


国別 近視有病率と年間手術施行率(2026年推計)

18-35 平均近視率近視人口(計)年間手術施行割合
日本86%1,772万人0.68%
韓国92%964万人2.80%
アメリカ45%3,609万人2.00%
分析:なぜ日本人は手術を避けるのか?


韓国では近視人口の約2.8%が毎年手術を選択していますが、日本はその4分の1以下の0.68%に過ぎません。有病率(目の悪さ)は韓国とほぼ同等、アメリカの倍近くあるにもかかわらず、この施行率の低さはなぜなのでしょうか。

2. 医学的な「近視の強さ」と、本来あるべき術式選択

多くの方が誤解されていますが、近視はすべて同じではありません。その「度数」によって、医学的に推奨される手術方法は明確に異なります。


近視の分類と推奨される治療法(医学的スタンダード)

分類屈折度数 (D)状態の目安推奨される術式
軽度近視-2.0D 未満眼鏡なしでも近くなら見えるSMILE Pro / レーシック
中等度近視-2.0 -6.0D裸眼では生活が著しく困難SMILE Pro / レーシック
強度近視-6.0D 以上眼鏡なしでは歩行も危険ICL(眼内コンタクトレンズ)

本来、角膜の厚みや形に問題がなければ、中等度近視(-6.0Dまで)までは「SMILE Pro」や「レーシック」といったレーザー矯正が、安全性・コスト・精度のバランスにおいて第一選択となります。一方、角膜を削る量が多くなりすぎる強度近視(-6.0D以上)において、初めて「ICL」が絶対的な優位性を持つことになります。

3. 日本市場の「歪み」:データと選択のミスマッチ

ここで、各国の実際の「近視の度数分布」と「選ばれている術式」を並べてみます。ここに日本の市場が抱える決定的な矛盾が隠されています。


度数分布vs 術式シェアの各国比較

中等度近視人口強度近視人口SMILE / LASIK シェアICL シェア
日本55%15%30%70%
韓国55%20%85%15%
アメリカ42%8%90%10%

韓国やアメリカでは、人口の大部分を占める中等度近視層が、合理的かつ低侵襲なレーザー手術(SMILEやLASIK)を選択しており、医学的適応とシェアが一致しています。

しかし、日本では強度近視が15%しかいないにもかかわらず、手術の70%ICLが占めています。 つまり、本来はSMILE Pro等のレーザー矯正が最も適しているはずの中等度近視層(約975万人)の多くが、医学的根拠ではなく「消去法」や「誤解」によってICLを選んでいるか、手術をあきらめているのです。この手術をあきらめている層が日本では多いため手術の施行割合が低いのです。

4. 歪みを生んでいる「2つの壁」:恐怖心と認知不足

なぜ、日本ではこれほどまでに医学的適応と実際の選択が乖離してしまったのでしょうか。

「角膜を削る」ことへの過度な恐怖心

日本では2010年代の報道等の影響で、「角膜を削る=危険・取り返しがつかない」というイメージが定着してしまいました。そのため、角膜への負担が極めて少ない最新技術があるにもかかわらず、「削らない=安全」というICLのキーワードだけが独り歩きし、盲目的に信じられている側面があります。

SMILE Pro(次世代手術)の圧倒的な認知不足

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韓国で爆発的に普及している「SMILE(スマイル)」は、レーシックの欠点(フラップを作る、ドライアイ、衝撃への弱さ)を克服した革新的手術です。日本ではこの「第3の選択肢」の認知があまりにも低く、患者様は「怖いレーシック」か「高価なICL」かの究極の二択を迫られているのが現状です。

5. 視力矯正手術の「現在地」:自分に最適な選択を知るために

「レーシックは怖い」「ICLなら安心」といった断片的な情報だけで判断するのは、現在の屈折矯正手術においては得策ではありません。技術は日進月歩で進化しており、かつての常識は塗り替えられています。

1. 【低侵襲の革新】SMILEpro

現在、世界的に主流となりつつあるのが、第3世代のレーザー視力矯正「SMILEpro」です。

  • フラップを作らない画期的な手法: 従来のレーシックのように角膜を大きくめくる(フラップを作る)必要がありません。わずか 24mmという極小の切開口 から、レーザーで作成した「レンチクル」を取り出すだけで完了します。
  • 角膜の強さを維持: 角膜表面の神経をほとんど切断しないため、術後のドライアイのリスクが激減しました。また、角膜の構造的強度を高く保てるため、スポーツや衝撃に対しても非常に強いという特徴があります。

2. 【究極の進化】レーシック(WaveLight Plus)

レーシック

日本国内では過去のイメージから敬遠されがちなレーシックですが、「適応(手術を受けられる条件)を厳格に守る」ことで、現在は究極の精度を誇る手術へと進化しています。

  • WaveLight Plus(ウェーブライト・プラス)の登場: 一人ひとりの角膜の歪みや全眼球のクセを解析し全自動で「その人の目にとっての最適解」を導き出します。
  • 質の高い見え方: 単に視力を出すだけでなく、夜間の見え方やコントラストの改善まで考慮された、まさに「究極の個別化矯正」の領域に到達しています。適応内であれば、非常に満足度の高い選択肢です。

3. 【強度近視の福音と課題】ICL(眼内コンタクトレンズ)

ICL(眼内コンタクトレンズ)

角膜が薄い方や、-8Dを超えるような強度近視の方にとって、ICLは非常に優れた術式です。しかし、メリットだけでなく「将来的な見通し」も正しく知っておく必要があります。

  • 手術の特性: 角膜を削らず、約3mmの切開からレンズを挿入します。万が一の際に「取り出して元に戻せる」可逆性が最大のメリットです。
  • 眼内手術のリスク: レーザー治療と異なり、目の中(眼内)を直接触る手術です。そのため、稀に白内障を誘発するリスク、あるいは感染症のリスクを伴います。
  • 30年後」を考える: ICLは永久に入れっぱなしにできるものではありません。将来(20年〜30年後)、目の構造的な加齢変化や白内障手術が必要になった際には、必ずこのレンズを抜き出す手術が必要になります。あくまで「ライフステージに合わせた期間限定の矯正」という側面も理解しておくべきでしょう。


三つの術式の比較表

特徴SMILEproレーシック (WaveLight Plus)ICL (眼内レンズ)
アプローチ低侵襲(3mm切開)フラップ作成(約8mm)眼内挿入(3mm切開)
角膜への影響レーザーで作成した角膜内の薄い膜(linticule)を抜き出す一定の切除ありなし(削らない)
得意な症例中等度〜強度近視軽度〜中等度(精度重視)強度近視・角膜が薄い方
将来の抜去不要不要白内障手術時に必要
主なリスクほとんどなしドライアイ(一時的)緑内障・白内障・眼内感染

まとめ:後悔しない選択のために

どの術式が「一番優れているか」ではなく、あなたの角膜の厚さ、近視の度数、そして「将来の目の健康をどう守りたいか」というライフプランに合わせて選ぶことが重要です。最新のテクノロジーは、私たちが想像する以上に、安全で快適な視界を提供してくれます。

6. 結論:データが示す、あなたの「最善」

日本の視力矯正市場は、今まさにアップデートが必要です。

「みんなが良いと言うからICL」ではなく、「自分の度数が-4.0Dだから、角膜を温存できるSMILE Proを選ぶ」というような、医学的根拠を保ちつつ、論理的で納得感のある選択をしていただきたい。

私たちは、世界を知る眼科医として、日本の皆様の心に寄り添いつつ、韓国やアメリカが享受している「自由な視覚体験」を、最も合理的な形でお届けすることを約束します。

よくある質問(FAQ)

Q. なぜ日本では韓国やアメリカに比べて、手術を受ける人がこれほど少ないのでしょうか?
A. 最大の理由は、「情報のアップデートが止まっていること」「過去の過度な不安」です。 日本では2010年代のレーシックに関するネガティブな報道が強く記憶に残っており、「角膜を削る=危険」というイメージが定着してしまいました。しかし、その間に世界では、角膜への負担を最小限に抑えた「SMILE Pro(スマイルプロ)」のような次世代技術がスタンダードになっています。韓国やアメリカではこうした最新技術への信頼が高いため、日本よりも積極的に手術が選ばれています。

Q.「中等度近視」なら、高価なICLよりもSMILE Proの方が適しているというのは本当ですか?
A. はい、医学的な合理性から言えばその通りです。 〜 程度の中等度近視であれば、角膜を削る量は非常に少なく、SMILE Proで安全に矯正が可能です。ICLは素晴らしい手術ですが、眼内手術(目の中にレンズを入れる手術)であるため、特有のリスク(白内障の早期化や眼圧上昇など)がゼロではありません。 不必要にリスクの高い手術を選ぶのではなく、「度数に対して最も侵襲(ダメージ)が少ない方法」を選ぶのが世界標準です。

Q. レーシックとSMILE Pro(スマイルプロ)は何が違うのですか?
A. 最も大きな違いは、「角膜に作る傷のサイズ」です。

  • レーシック: 角膜を約直径8mmにわたって大きく切り、蓋(フラップ)を作ります。
  • SMILE Pro: フラップを作らず、わずか2-3㎜の小さな切れ込みから視力を矯正します。

傷口が小さいため、術後のドライアイが非常に少なく、衝撃にも強く、さまざまなスポーツを行うかたにも安心して受けて頂ける手術です。

Q.「ICLは取り出せるから安心」と聞きましたが、本当でしょうか?
A. 「可逆性(元に戻せる)」はICLの大きなメリットですが、「取り出さなくて済むのが一番である」という視点も忘れてはいけません。 ICLを取り出す際には再度眼内手術を行う必要があり、目にとっては負担となります。中等度近視の方であれば、最初から角膜を温存できるSMILE Proを選んだ方が、結果として生涯にわたる目の健康を維持しやすいケースも多々あります。

Q. 強度近視-6.0Dなのですが、SMILE Proは受けられませんか?
A. 強度近視の方でも、角膜の厚みが十分にあり、安全基準を満たしていればSMILE Proは可能です。 ただし、度数が強くなるほど角膜を削る量が増えるため、当院では独自の基準に基づき、ICLの方が長期的な視界の質が高いと判断した場合には、ICLをお勧めしています。

Q. 手術後、将来的に白内障や緑内障の手術は受けられますか?
A. はい、可能です。 SMILE ProもICLも、将来の病気の治療を妨げるものではありません。当院では術前の精密検査のデータを永久保存しておりますので、数十年後に別の目の病気になった際にも、そのデータを活用して最適な治療を受けていただけます。

エゲンビジョンクリニック(Egen Vision Clinic)
2026年4月、梅田で日本の視力矯正の新しいスタンダードが始まります。

参考文献

  • Yotsukura, E., et al. (2019). “Current Prevalence of Myopia among adolescents in Tokyo.” JAMA Ophthalmology.
  • Jung, S. K., et al. (2012). “Prevalence of Myopia in 19-Year-Old in Seoul.” IOVS.
  • World Health Organization (2019). “World report on vision.”
  • Market Scope, LLC. “Comprehensive Report on the Global Refractive Surgery Market.”
  • JSCRS Clinical Survey 2024

INDEX

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