レーシック・SMILEの安全性を正しく理解することは、後悔しない視力矯正の第一歩です。本記事では最新技術や術前検査の重要性、各手術の特徴と注意点を整理し、あなたに最適な方法を見極めるための具体的な視点をお伝えします。
レーシック・SMILE手術の仕組み

レーシック(LASIK)とSMILE(Small Incision Lenticule Extraction)は、角膜の形をレーザーで変えることで、近視・遠視・乱視などの屈折異常を矯正する視力回復手術です。どちらも眼鏡やコンタクトに頼らず生活できる視力を目指します。
レーシック(LASIK)
角膜表面にフラップ(薄いふた)を作り、その下の角膜実質層をレーザーで削る。フラップは元の位置に戻され自然に接着。

SMILE
角膜内にレンズ状の組織(レンチクル)を作り、小切開から取り出す。フラップを作らないため角膜強度が保たれやすい。

歴史と技術進化
- レーシックは1990年代から行われており、30年以上の実績を持つ術式です。
初期は機械式マイクロケラトームでフラップを作っていたためトラブルもありましたが、現在はフェムトセカンドレーザー導入により、精度と安全性が大幅に向上しました。 - SMILEは2008年頃にドイツのCarl Zeiss社が開発、2011年に欧州承認、2016年に米国FDA承認。比較的新しい術式ですが、症例数は増加し長期データも蓄積されています。
- 現在は角膜形状解析や高次収差測定に基づく個別化手術(カスタムレーシック、トポガイドレーシックなど)が主流となり、より精密な矯正が可能になっています。
成功率と患者満足度
PROWL研究(レーシック後の患者自己申告による視覚症状と満足度の大規模観察研究)では、
- 術後「日常生活に支障があった」と答えたのは1%未満
- 手術に不満と答えたのは1~2%のみ
- 95%以上が自分の視力に満足と回答
レビュー論文のデータでは、
- 99.5%の患者が20/40(0.5)以上の裸眼視力を達成
- 98.6%が±1D以内、90.9%が±0.5D以内の屈折誤差
と報告され、高い安全性と精度が確認されています。
レーシックとSMILEの比較
レーシックとSMILEを比較した研究によれば、両者とも視力・安全性・予測性においてほぼ同等の成績であり、生じる症状や合併症の傾向も類似しています。
| 項目 | レーシック | SMILE |
|---|---|---|
| 視力・安全性 | ほぼ同等 | ほぼ同等 |
| 合併症傾向 | 類似 | 類似 |
| ドライアイ | やや高い | 低い傾向 |
| 回復速度 | 標準 | やや早い |
ただし、研究ではSMILEの方がドライアイの頻度が低く、回復も早い傾向が報告されています。
例:術後6か月で人工涙液不要となった割合 → SMILE:約80%、レーシック:約57%
レーシックは世界で最も選ばれている近視矯正手術

レーシックは、世界で最も広く行われている屈折矯正手術です。30年以上の歴史を持ち、豊富な臨床データと安全性が確立されており、現在も多くの国で視力矯正のスタンダードとして採用されています。近年ではSMILEの普及も進み、国や地域によって主流術式が異なる傾向が見られます。
世界での普及状況と実績
世界では4,000万件以上のレーザー視力矯正手術が行われ、そのうち約9割以上をレーシックが占めています。米国でも年間70〜80万件のレーシックが実施されており、非常に高い普及率を維持しています。さらに、レビュー論文や学会報告でも「レーザー視力矯正手術の約9割以上がレーシック」と示されており、長年にわたる安全性と信頼性が裏付けられています。
国・地域別の傾向
| 国・地域 | 主流術式 | 特徴・傾向 |
|---|---|---|
| 米国・欧州 | レーシックが約9割 | 長期データが豊富、SMILEも急速に普及中 |
| 韓国 | SMILE約80%、レーシックは少数 | SMILEが主流。回復が早く、国際患者も多い |
| 日本 | ICLが70%超 | 過去の感染事故の影響でレーシック人気が低下、ICL選択が増加 |
| 台湾・中国・シンガポール | SMILEが主要 | 若年層の近視率が高く、SMILEが急速に定着 |
韓国での詳細データ
- 韓国ではレーザー視力矯正手術の約80%がSMILE。
- ある報告では63,416例のうち、SMILEが79.4%、レーシックが5.7%という結果。
- レーシック術後3年追跡では、3か月後に96.3%が裸眼20/40以上、69.9%が20/20以上を達成する優れた成績も報告。
- 年間手術件数は約20万人規模で、海外からの医療ツーリズムも盛ん。
日本の状況とICLの位置づけ
- 2008〜09年のレーシック術後感染事故で信頼が低下し、患者の関心がICL(有水晶体眼内レンズ)へシフト。
- 最近では日本国内の近視矯正手術のうちICLが70%以上を占めるとの報道もあります。
- ICLは角膜を削らず、高度近視(−6D~−18D)に対応できる可逆性のある方法で、角膜への影響が少ない点が支持されています。
SMILEの普及と評価
小切開(約4mm)で角膜を切開する低侵襲手術は、角膜の強度を保ちやすい点が特徴であり、ドライアイなどの副作用が少なく、回復も早い傾向が報告されています。
成績比較では、6か月後の±0.50D以内の屈折誤差達成率が、
– SMILE:96.3%
– レーシック:83.8%
と、むしろSMILEがやや優れているという結果もあります。角膜生体力学への影響もSMILEの方が小さいとする研究があり、安全性の観点から支持が拡大しています。
レーシック・SMILE Proで起こりうる主なリスクと副作用(合併症)

レーシックやSMILE Proは安全性の高い視力矯正手術ですが、術式によって発生しやすいリスクや副作用には違いがあります。ここでは、PMC論文や最新研究をもとに、代表的な合併症とその発生傾向を整理しました。比較のため、ICLについても簡単に触れます。
ドライアイ
- レーシック
角膜の知覚神経が切断されるため、術後95%以上で一時的にドライアイが発生。多くは6〜12か月で改善するが、慢性化は1%未満。
- SMILE Pro(VisuMax 800)
フラップを作成しないため神経損傷が少なく、重度のドライアイはほとんど報告なし。
ハロー・グレア(夜間の光のにじみ・まぶしさ)
夜間や暗い場所で光がにじんだり、まぶしく感じる症状です。特に車の運転時に気になることがあります。
Parkら(2023)による比較研究では、ICL、SMILE Pro、レーシックの術後3か月の視覚品質を比較し、以下の傾向を報告しました。
- ICLで最も多く報告
- レーシックはやや少なめ
- SMILE Proが最も少ない傾向
フラップ関連トラブル(レーシック特有)
レーシックでは角膜にフラップを作るため、特有の合併症が起こることがあります。
- フラップのずれ・しわ・上皮内迷入・DLK(層間炎症)などの合併症
- 発生率は約0.24%
- 術後何年経っても強い衝撃でずれる可能性あり
吸引ロス・術中トラブル(SMILE Pro)
SMILE Proは従来型より術中トラブルが大幅に減っています。
- 吸引ロス発生率:0.13%(765眼中1眼)(Cungら(2025))
- 術中合併症・視力低下はゼロ
- VisuMax 800は旧型(VisuMax 500)より高次収差やズレが少なく、視覚品質も良好(Kim & Chung(2025))
角膜拡張症
角膜拡張症とは、レーシックなどの手術後に角膜が薄く弱くなり、前方に膨らんで視力が低下する状態です。
| 術式 | 発生率・傾向 |
|---|---|
| レーシック | 0.04〜0.09%と報告。術前の円錐角膜や角膜形状異常があるとリスク上昇 |
| SMILE Pro | 現時点では報告なし。ただし3〜6か月追跡のデータが中心で、長期データは今後必要 |
その他の副作用(稀)
| 合併症 | レーシック | SMILE Pro(VisuMax 800) | ICL |
|---|---|---|---|
| 網膜剥離・ぶどう膜炎 | ごく稀(0.3%以下) | 報告なし(現時点) | 極めて稀、硝子体牽引変化による剥離に注意 |
| 高次収差・不正乱視 | 残存することあり | VisuMax 800では改善傾向 | レンズ中心ずれで光学質劣化あり |
| DLK(角膜炎) | 0.5〜2.0%で報告 | 報告なし(現時点) | 該当なし |
リスクと安全性について
| 術式 | 主なリスク | 安全性傾向 |
|---|---|---|
| レーシック | ドライアイ(95%)、フラップ異常、角膜拡張症 | 長期データ豊富。術前検査でリスク回避可能 |
| SMILE Pro | 吸引ロス(0.13%)、短期追跡中心 | 視力精度・安全指数ともに非常に良好。ドライアイ少 |
| ICL | ハロー・グレアが多い、レンズ位置ずれ | 高度近視に有効だが、白内障進行リスクに注意 |
安全性を高めるために知っておくべきポイント

「最新技術・術前検査・クリニック選び」でリスクを回避
視力矯正手術の安全性を最大限に高めるには、最新機器の導入、術前検査の徹底、そして信頼できるクリニックを選ぶことが欠かせません。ここでは、旧世代との比較も交えながら最新の技術と検査のポイントを整理します。
最新技術の活用
最新のレーシックでは、AlconのFS200とEX500に加え、Topolyzer VARIOやSightmapといった解析システムを組み合わせることで、より高精度な手術が可能になっています。これにより、従来のレーシックで課題となっていた高次収差(ハローやグレア、コントラスト低下の原因)を効果的に抑えられる点が大きな特徴です。
技術の仕組み
- Topolyzer VARIO:角膜形状を22,000点で高精度にスキャン
- Sightmap:眼球全体の波面収差を解析
- EX500(ray-tracing照射):これらの情報を統合し、高次収差を精密に補正
研究結果
| 研究者 | 方法 | 主な成果 |
|---|---|---|
| Kanellopoulos(2024) | EX500+Sightmapによるray-tracing レーシック | 球面収差・coma収差が大幅に減少、コントラスト感度と視覚品質が改善 |
| Li et al.(2024) | EX500ベースのray-tracing レーシックと従来方式の比較 | 高次収差が少なく、視覚品質の向上として評価 |
| WaveLight® FS200+EX500結果報告 | FS200+EX500プラットフォームによるレーシック | 視力・コントラスト感度が改善しつつ、高次収差の発生は最小限 |
引用文献
・Kanellopoulos AJ. Ray‑Tracing Customization in Myopic LASIK with EX500 and Sightmap.
・Li L, et al. Comparison of clinical outcomes: corneal wavefront‑based vs EX500 ray‑tracing LASIK.
・Rowen SL, et al. Retrospective comparison: Topography‑guided vs Wavefront‑guided LASIK outcomes.
・Amin MH et al. Topography‑guided vs wavefront‑guided LASIK:
・Gurnani B, Kaur K. Recent Advances in Refractive Surgery: An Overview
Topography-Guided レーシック vs Wavefront-Guided レーシック
従来主流だったWavefront-guided レーシックは眼全体の波面収差を補正しますが、角膜表面の細かな不規則性や眼内起因の収差までは対応が難しいことがあります。
一方で、Topography-guided レーシック(Contoura Vision等)は角膜表面の凹凸を直接補正し、夜間視や高次収差の改善に有効とされています。
- Rowenら(2024):トポガイド群はウェーブフロント群よりも高次収差が少なく、夜間視のコントラスト感度が改善
- Aminら(2024):comaや球面収差の軽減においてトポガイド群が優位
現在はTopography-guided レーシックがより精密で安定した結果をもたらすと評価されています。
| 項目 | Wavefront-guided レーシック(旧世代) | Topography-guided レーシック(Contoura Vision等) |
|---|---|---|
| 補正対象 | 波面収差 | 角膜表面の凹凸を直接補正 |
| 弱点 | 角膜表面の不規則性や眼内収差(ORA)に対応しにくい | 内部収差までは対応困難 |
| 研究報告 | 高次収差が残存することあり | coma・球面収差が少なく、夜間視コントラスト改善 |
最新プラットフォーム:SMILE Pro(VisuMax 800)の安全性
SMILE Pro(VisuMax 800)は、従来型に比べてレーザー速度と精密性が大幅に向上しました。
- 高速レーザー出力・精密なセンタリングにより、吸引ロスやオフセットの発生を大幅に抑制。
- Saadら、Cungら、Kim & Chungの複数の研究で以下の成績が確認されています。
– 安全指数:1.00
– 有効指数:0.92〜1.01
– 術中合併症:ゼロ
– 吸引ロス:約0.13%
SMILE Pro(VisuMax 800)は、合併症リスクをほぼ排除しつつ、高い有効性と安全性を両立する最新の視力矯正手術プラットフォームといえます。
術前検査・スクリーニングの重要性
どの術式を選んでも、術前検査の徹底が安全性を左右します。
- 角膜解析:PentacamやCASIAで厚み・形状を測定
- 涙液・マイボーム腺評価:LipiScanなどでドライアイ傾向を確認
- 高次収差評価:光学的な歪みを事前に測定
- 全身状態の確認:年齢、屈折の安定性、自己免疫疾患、乾燥症の有無を含めた総合評価
これにより、角膜拡張症などのリスクを未然に回避し、最適な術式を選ぶことが可能になります。
レーシック・SMILE Pro手術を受けた人のリアルな声

安心できる成功談と知っておくべき術後不満
視力矯正手術は高い成功率と満足度を誇りますが、すべての人が快適な結果を得られるわけではありません。大多数は「眼鏡やコンタクトから解放された快適な生活」を体験しますが、一部では術後のドライアイ、視覚不快感、神経障害性角膜痛(NCP)などが問題となることもあります。ここでは、成功例と不満例の両面をPMC論文のデータに基づいて整理します。
成功・満足の声
- 多くの患者は裸眼で生活できる自由を実感し、仕事や日常生活が快適になったと回答。
- 特にSMILE/SMILE Proでは、術後の視力安定やドライアイの少なさが評価され、満足度は高い傾向にある。
術後ドライアイと不快感
レーシック後は短期的にドライアイがほぼ必発します。
- 通常は6〜12か月以内に改善する。
- しかし1〜2%の患者では慢性化し、乾燥感や違和感が続くことがある【PMC4411662】【PMC10126282】。
- 慢性ドライアイは眼精疲労や頭痛につながることもあり、生活の質を下げる原因となる。
過矯正・不正乱視による不満
術後の過矯正や不正乱視は、遠近のぼやけや眼精疲労、夜間視力の低下につながります。
- Bamashmusらの研究では、過矯正:約30%、不正乱視:約30%で視覚不満が報告されている【PMC4302464】。
- 慎重な度数設定と術後フォローアップが重要。
SMILEとレーシックの比較:慢性痛・不快感
最新の研究(Teoら 2025)では、神経障害性角膜痛(NCP)がSMILE後13.3%、レーシック後10.5%で発生することが報告されています【PMC12229060】。他研究より高めの数値ですが、術後に慢性の痛みが生じるリスクは無視できません。
神経障害性角膜痛(NCP)とは?

神経障害性角膜痛(NCP)は、レーシック・SMILE後に起こることがある症状で、ヒリヒリ感、異物感、乾燥感が長期間続く慢性の痛みを指します。原因は神経の損傷や過敏反応とされ、ごく少数ながら患者に深刻な影響を与えることがあります。
論文に基づく発症率とリスク因子(Teo CHYら 2024)
発症率
- レーシック:10.5%
- SMILE:13.3%
SMILEの方が若干高いが、統計的には僅差。
リスク因子
- 高度近視(−8D以上):NCPの発症リスク約9.6倍
- 角膜神経の構造異常:事前にIVCMで評価可能
- ドライアイの既往:SDIスコアや涙液機能で評価
- 精神的ストレスやうつ傾向:術後の痛み知覚に影響
- 免疫異常(シェーグレン症候群など):炎症が神経修復を阻害
参考文献
Teo CHY, et al. Neuropathic corneal pain following refractive surgery…
術前に行うべき検査・評価
| 評価項目 | 方法 | 意義 |
|---|---|---|
| 角膜神経の状態 | 角膜共焦点顕微鏡(IVCM) | 神経線維の長さ・密度を測定し、異常があればリスク高 |
| 涙液の状態 | OSDIスコア、BUT、シルマー検査 | 涙の質・量を評価、慢性乾燥の予測に有効 |
| 精神的評価 | PHQ-9、GAD-7などの簡易問診 | 不安・うつ傾向があると痛みが慢性化しやすい |
| 免疫疾患の有無 | 既往歴や血液検査 | 自己免疫疾患があると神経修復が遅れる |
なぜ「痛み」が残るのか
角膜は知覚神経が密集しており、手術で一部が損傷します。通常は修復されますが、以下のような場合は痛みが長期化します。
- 神経の過敏化
- 炎症や免疫異常による修復不全
- 脳内の「痛みの記憶」が固定化
患者へのアドバイスとトラブル回避のポイント
- 見え方だけでなく、術後に生じうる不快感や痛みのリスクを把握しておくことが重要です。
- 慎重な度数設定と術式選定で過矯正や不正乱視を防ぐことができます。
- 術後に違和感が続く場合は我慢せず、神経痛やドライアイ管理を行えるクリニックへ相談することが大切です。
★EGEN Vision Clinicの対応方針
当院では、CASIAや涙液スコア評価を含めた術前検査を徹底し、NCPのリスクをできる限り回避する取り組みを行っています。
手術方法を比べたときの安全性は?

Contoura(トポガイドレーシック)/SMILE Pro(スマイル手術)/EVO ICL(眼内コンタクトレンズ)
視力矯正手術は複数の選択肢がありますが、どれも「一番良い」とは言えません。大切なのは、それぞれの特徴を理解し、自分の目や生活スタイルに合った方法を選ぶことです。ここでは主要な3つの手術方法を整理します。
手術方法の違い
| 術式 | 方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| Contoura レーシック | 角膜をレーザーで削る | 夜のにじみを軽減しやすく、見え方の精度が高い |
| SMILE Pro | 角膜内の組織を2〜3mmの切開から取り出す | フラップを作らないため、術後の乾燥が比較的少ない |
| EVO ICL | 虹彩の後ろにレンズを挿入 | 角膜を削らずに済み、強度近視にも対応できる |
見え方の目標(小数視力)
| 項目 | Contoura レーシック | SMILE Pro | EVO ICL |
|---|---|---|---|
| 見え方の目標(小数視力) | 1.2〜1.5をめざせる(非常に精密) | 1.0〜1.2を安定して達成しやすい | 強度近視でも1.0以上を出しやすい |
| 夜間視力・コントラスト | 夜のにじみ・ハローを軽減しやすい。夜間運転が多い人向き | 新型(VisuMax 800)で夜間視も安定、にじみ少なめ | コントラスト感度は良好。ただし光がリング状に見えることあり、定期検診が重要 |
| ドライアイ・乾燥感 | 術後しばらく乾きやすい。術前ケアが大切 | フラップを作らないため乾燥は軽め | 角膜を削らないためドライアイはほぼ起こらない |
安全性と合併症の違い
どの手術も安全性は高いものの、起こり得る合併症は異なります。
| 術式 | 主なリスク・注意点 |
|---|---|
| Contoura レーシック | 過矯正・低矯正、夜間のハロー・グレア、ドライアイ、まれに角膜神経痛 |
| SMILE Pro | 過矯正・低矯正、ハロー・グレア、ドライアイ(軽め)、まれに角膜神経痛 |
| EVO ICL | レンズのずれや回転、vaultが狭くなることで白内障リスク、サイズ不適合による入れ替え、術後定期検診が必須 |
術式選びの考え方
自分の目の状態や生活スタイルに合わせて選択することが大切です。
| 条件・ライフスタイル | 向いている術式 |
|---|---|
| 角膜が薄い/形が不安定 | ICL |
| 前房が狭い | ICLは不適応 |
| ドライアイが強い | SMILE Pro または ICL |
| 夜間運転が多い/光のにじみが気になる | Contoura レーシック |
| PC・スマホ長時間使用 | SMILE Pro |
| 強度近視/角膜を削りたくない | ICL |
まとめ|「どの手術が良いか」より「自分に合っているか」
- 夜間運転が多い人 → Contoura レーシック
- 強度近視や角膜が薄い人 → EVO ICL
- ドライアイ傾向が強い人 → SMILE ProまたはICL
すべての術式に高い安全性がありますが、最も大切なのは 術前の丁寧な検査と相談 です。不安や疑問は医師と十分に話し合い、自分の生活や将来を見据えた選択をすることが、手術後の満足につながります。
手術前にやっておくべき準備とセルフチェック

はじめに:「手術する/しない」を決める前に大切なこと
視力矯正手術は「メガネやコンタクトを外したい」だけで進めるものではありません。
- 自分の目に本当に合っているか?
- 手術後にどんな生活を送りたいか?
- 年齢や生活スタイルを踏まえ、最適な設計ができているか?
これらを丁寧に確認することで、安全性が高まり、手術後の満足度も大きく向上します。
手術を受ける“意味”を整理しよう
自分に問いかけてみることが大切です。
- メガネ・コンタクトでどれくらい不便を感じているか?
- 手術でその不便は改善できそうか?
- 手術後の理想の見え方は?(遠く重視/近く重視/バランス)
例:
- 「毎朝コンタクトを入れるのがつらい」
- 「旅行や仕事で装用が面倒」
- 「老眼が始まり、近くも遠くも不便」
不便さを具体的にするほど、手術の意味が見えてきます。
見え方のゴール(目標視力)を考えておく
手術では「視力を1.5にするか、1.0にするか」など、細かく設計できます。 とくに30歳以降は老眼が始まる時期なので、「どこを最もよく見えるようにするか」が重要です。
| タイプ | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 遠く重視(両眼1.2〜1.5) | 遠方がくっきり安定 | 運転やアウトドアが多い/20〜30代前半 |
| バランス型(片眼−0.5Dなど) | 手元〜遠方の切替が自然 | 30代後半〜40代前半/老眼対策をしたい人 |
| 手元重視(両眼−0.75Dなど) | PC作業や読書が快適 | デスクワーク中心/老眼が始まっている人 |
ゴールの選び方は、Contoura・SMILE・ICLいずれの設計にも直結します。
ドライアイがあるか確認しておこう
以下が当てはまる人は、術前に眼表面を整えることが大切です。
- コンタクトで乾く
- 朝にゴロゴロする
- 点眼薬が欠かせない
SMILEは比較的ドライアイが起きにくいとされますが、術前の乾燥状態が強い方はどの手術でも注意が必要です。
簡易セルフチェック(EGEN Refractive Questionnaire)
次の質問に、思いつく範囲で○や×をつけてみてください。
【1】今の生活と視力への満足度
- メガネやコンタクトを外したい理由がはっきりしている
- 裸眼で生活したいシーンが多い
- 朝と夜で見え方に差がある
- 夜間運転が多く、光のにじみが気になる
【2】目の状態・体質
- コンタクトを長時間つけると乾きやすい
- 日常的に点眼している(しみたり、痛くなることがある)
- 光やまぶしさが苦手
- 慢性的な痛み・不安傾向がある(頭痛、肩こりなども)
【3】生活と将来
- 老眼も考えておきたい(特に30歳以上)
- 術後の通院を負担に感じない
- ICLでも角膜手術でも、自分に合う方を選びたい
○が多ければ、手術で生活が快適になる可能性が高いです。
×が多くても、術前のケアや設計の工夫で改善できる場合があります。
おわりに:安全性を決めるのは「あなたの設計」
レーシック、SMILE、ICLはどれも優れた技術ですが、手術後の満足は「自分に合った設計」ができてこそ得られるものです。
- どんな不便を改善したいか
- どの見え方をゴールにするか
- ドライアイや老眼など自分の状態にどう対応するか
これを整理することが、最も安全で満足度の高い手術につながります。
レーシック・SMILE Proの安全性に関するQ&A

Q1:レーシックで失明するリスクはありますか?
極めて稀ですが、術後の重篤な感染症などによって視力が大幅に低下する可能性はゼロではありません。
レーシックやSMILE Proは角膜の浅い層にのみ施術を行うため、直接的な「失明」はほぼ報告されていません。ただし、術後感染や角膜神経の損傷による視機能障害は可能性として存在します。適切な術後管理と迅速な対応が重要です。また、2008年に銀座眼科で発生した集団感染事件では、適切な衛生管理が行われていなかったことにより重篤な合併症が多数報告されました。
Q2:術後に視力が後戻りすることはありますか?
軽度の視力の戻り(リグレッション)は起こることがありますが、多くは予測範囲内であり、大幅な戻りは非常に稀です。
長期追跡の研究では、年あたり0.1〜0.2D程度の軽微な近視戻りが一部の患者に見られましたが、生活に支障をきたすレベルではないとされています。特にSMILE Proは角膜構造を温存するため、長期安定性においても評価が高まっています。
Q3:再手術(リタッチ)は必要になることはありますか?
再手術が必要になることはありますが、安全性は確保されており、適切に対応可能です。
レーシックでは術後の屈折誤差や視力の戻りに対して再照射(エンハンスメント)を行うことがありますが、その頻度は約5〜10%程度とされています。SMILE Proではフラップがないため、再手術はPRKやトランスPRKで行うことが一般的です。
Q4:40歳以上でも手術を安全に受けられますか?
年齢だけで不適応とされることはありません。ただし、調節力や眼表面の状態を考慮した慎重な判断が必要です。
40歳を超えると、老視の進行や角膜の回復力の低下、涙液減少などの影響を受けやすくなります。また、眼精疲労や異常光視症(ハロー・グレア)への過敏反応が出やすいことも報告されています。したがって当院ではマイクロモノビジョンのような特殊な焦点設定法は採用せず、正視設定を基本としつつ慎重に判断しています。
Q5:妊娠中や授乳中に手術はしても大丈夫ですか?
一般的には避けるべきです。
妊娠・授乳期はホルモンバランスの影響で角膜厚や涙液分泌量、屈折値が変動しやすく、術後の視力安定性に影響する可能性があります。また、術後の抗菌点眼薬やステロイド点眼薬の母体・胎児への影響が不明確なため、原則として延期が推奨されています。
まとめ:あなたに合った視力矯正を選ぶために

視力矯正手術には、Contoura(トポガイドレーシック)・SMILE Pro・EVO ICLといった多様な方法があります。どれも実績と信頼性のある術式ですが、最も大切なのは「どれが一番良いか」ではなく、「自分にとって合っているか」です。
① 手術方法の特徴と向いている人
| 術式 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| Contoura(トポガイドレーシック) | 角膜の歪みを整え、夜間視力やコントラストを改善 | 夜の運転が多い/見え方の質を重視 |
| SMILE Pro | 小さな切開で乾燥が少なく、術後早期から快適 | ドライアイ気味/PC作業が多い |
| EVO ICL | 角膜を削らず、強度近視にも対応 | 角膜が薄い/将来を見据えて温存したい |
② あなたに合った「目標視力」を決める
| 視力設計 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 両眼とも遠見(1.2〜1.5) | 遠くをくっきり見える | 運転・スポーツ中心/若年層 |
| 片眼を近見寄り(−0.75Dなど) | 遠近のバランスが取れる(ミニモノビジョン) | 30〜40代/老眼対策をしたい |
| 両眼やや近視残し(−1.0D) | 手元作業に強い | 読書・PC作業中心 |
③ 注目すべきポイント
- 乾燥が強い方:術前のドライアイ治療が重要。
- 夜の見え方が気になる方:Contouraで光のにじみを軽減できる可能性。
- 刺激や痛みに敏感な方:SMILE ProやICLで負担が少ない場合あり。
- 老眼が気になる方:視力設計(モノビジョンなど)で対応可能。
④ 選択前のチェックリスト
以下のポイントをクリニックで確認してみましょう。
- 自分の目は各術式に適応があるか?
- 希望する視力(遠く・近く)はどのくらいか?
- 乾燥や光のにじみのリスクは?術前に対策できるか?
- ICLの場合、サイズや安全性の評価はどうか?
- 術後フォローや再調整の体制は整っているか?
⑤ 最後に:安心は「設計と対話」でつくられる
どの手術も万能ではありません。しかし、自分の目と生活に合わせた丁寧な設計と、医師との対話があれば、不安を減らし、満足を大きくすることができます。
焦らず情報を整理し、納得できる視力を一緒に作り上げることが大切です。





























