レーシックと近視のすべて|強度近視の人が知っておくべき安全ラインと選択肢

強度近視でもレーシックは可能?角膜の厚み(RSB300μm以上)やPTA40%未満など、安全に受けるための条件をやさしく解説。レーシックとICLの違いも詳しく紹介します。

近視が強く、レーシックを受けたいけれど「自分は手術できるのかな?」と不安に感じる方は多いでしょう。
実は、近視の度数や角膜の厚みなどによって、レーシックができるかどうかは大きく変わります。
この記事では、強度近視の人が知っておくべき安全ラインと、ICLなどの代替手術をわかりやすく解説します。

近視と強度近視とは

近視とは、遠くのものがぼやけて見える状態のことです。その中でも特に度数が強い「強度近視」は、視力低下だけでなく、将来的な目の病気のリスクも高くなるため注意が必要です。

近視の基本メカニズム

近視は、目の奥行き(眼軸)が長くなり、光が網膜の手前で焦点を結ぶことで起こります。
この状態では、遠くのものがぼやけて見え、眼鏡やコンタクトレンズで矯正する必要があります。
近視の進行は、遺伝や生活習慣、長時間の近距離作業などが関係しています。

強度近視の定義

一般的に、近視度数が−6.00D以上、または眼軸長が26mm以上の場合に「強度近視」と呼ばれます。
この状態では、視力の問題だけでなく、網膜剥離や黄斑変性などの合併症が起こりやすくなるため、定期的な眼科検診が大切です。

強度近視でもレーシックはできるのか

レーシックは、角膜をレーザーで削って視力を矯正する手術です。しかし、角膜の厚みや近視の度数によっては、安全に行えないこともあります。

レーシックの適応範囲

レーシックでは、一般的に近視−9.00D、乱視−3.00Dまでが適応とされています。
しかし、角膜が薄い方や削る量が多い方では、角膜が変形してしまうおそれがあるため、手術できないこともあります。
そのため、レーシックの可否は「度数」だけでなく「角膜の厚み」も重要な判断基準になります。

安全の目安となる数値

安全にレーシックを行うためには、次の2つの基準を守ることが推奨されています。

  • RSB(残存角膜ベッド厚):手術後に角膜の深い部分が300μm以上残ること
  • PTA(角膜切除率):角膜を削る割合が40%未満であること

この条件を満たさない場合は、レーシックやSMILE手術ができず、別の方法(ICLなど)を検討する必要があります。

強度近視でレーシックを受けるリスク

強度近視の人がレーシックを受ける場合、一般的な近視の人よりもリスクが高くなることがあります。手術前にしっかり理解しておきましょう。

視力が戻る「近視戻り」

強い近視の方は、手術後に時間が経つと少しずつ視力が戻ることがあります。
これは「回帰」と呼ばれる現象で、矯正量が大きいほど起こりやすくなります。
術後に定期検診を受け、必要に応じて再矯正や生活習慣の改善を行うことが大切です。

角膜や目のトラブルの可能性

角膜を削りすぎると、時間が経ってから「角膜拡張症(エクタジア)」を引き起こすことがあります。
また、ドライアイや夜間の見え方の変化(光がにじむ「ハロー」やまぶしさ「グレア」)が起こることもあります。
これらの症状は多くの場合一時的ですが、体質や目の状態によっては長く続くこともあります。

強度近視におすすめのICLとは

レーシックができない場合でも、視力を改善する方法はあります。代表的なのが、角膜を削らずに行う「ICL(眼内コンタクトレンズ)」です。

ICLの特徴

ICLは、特殊なレンズを目の中に入れて視力を矯正する方法です。
角膜を削らないため、強度近視の方や角膜が薄い方にも適しています。
また、将来視力が変わった場合には、レンズの交換や取り外しも可能です。

メリットと注意点

メリット

  • 高度近視(−10D以上)にも対応可能
  • 角膜の形を変えないので、構造的に安定
  • 手術後の回復が比較的早い

注意点

  • レンズの位置(Vault)が適正かを定期的に確認する必要がある
  • 光の輪(ハロー)や角膜内皮細胞の減少など、長期的な管理が必要

ICLは、強度近視の人にとって安全性と安定性を両立した選択肢です。

手術以外の視力回復法はある?

「目の体操」や「トレーニング」で視力が回復すると言われることがありますが、医学的に効果が証明された方法はありません。成人の場合、眼軸(眼の奥行き)が伸びきっており、視力回復は現実的ではありません。

現実的な視力維持のポイント

大人の近視は、目の構造(眼軸)が伸びきっているため、自然に治ることはほとんどありません。
強度近視の人が視力を守るためには、次の3つを意識しましょう。

  1. 正確な検査と適応評価を受けること
  2. 安全基準(RSB300μm以上・PTA40%未満)を守ること
  3. 目の乾燥や生活環境を整え、再発を防ぐこと

よくある質問Q&A

Q1. 強度近視で乱視もありますが、レーシックはできますか?

→ 角膜の厚みや安全域(RSB・PTA)を満たす場合に限り可能です。条件を満たさなければ、ICLがより安全です。

Q2. レーシック後に視力が落ちたら再手術できますか?

→ 角膜に十分な厚みが残っていれば可能ですが、初回から安全設計を行うことが大切です。

Q3. レーシックとICL、どちらが安全ですか?

→ 角膜の余力がある場合はレーシックも選択肢になりますが、安全域が狭い方はICLが理にかなっています。

Q4. RSBは絶対に300μm必要ですか?

→ 最低限の基準は250μmですが、多くの専門医は安全のため300μm以上を推奨しています。

まとめ

強度近視の人にとって、レーシックを受けるかどうかの判断はとても重要です。安全ラインを超えた手術は、将来的なトラブルを招く可能性があります。

強度近視では、RSB300μm以上・PTA40%未満が安全の目安です。
この条件を満たせない場合は、角膜を削らないICLを検討しましょう。
大切なのは、「できるか」よりも「してよいか」を考え、自分の目に合った方法を選ぶことです。

参考文献
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INDEX

強度近視でもレーシックは可能?角膜の厚み(RSB300μm以上)やPTA40%未満など、安全に受けるための条件をやさしく解説。レーシックとICLの違いも詳しく紹介します。

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