ICL術後は見えるようになっても油断は禁物です。術後3日間に控えるべき行動や注意点を具体的に解説し、視力を安定させるための正しいケアをお伝えします。
ICL手術後の視力回復と経過

ICL(眼内コンタクトレンズ)手術を受けた後、「どれくらいで見えるようになるのか」「視力はいつ安定するのか」といった疑問を持つ方は少なくありません。ここでは、術後の視力回復の流れや安定までの目安を、専門的な視点も交えて解説します。
多くの方は【手術当日〜翌日】で視力の大幅な改善を実感
ICL手術は角膜を大きく削らずに視力を矯正する方法のため、術後の回復が非常に早いことが特徴です。
翌日の診察時点で裸眼でもはっきり見えることが多く、視力検査では0.8〜1.2程度に到達することもあります。ただし視力が安定するまでには個人差があり、完全に落ち着くまでには数週間〜1か月程度を見ておく必要があります。
術後の視力回復スケジュール(一般的な流れ)
| 術後の時期 | 視力の状態・見え方の変化 |
|---|---|
| 当日(術後数時間〜) | ぼやけや光のにじみを感じつつも、視力の改善を実感する方もいます。まぶしさや違和感を感じる場合もあり、運転は禁止です。 |
| 翌日 | 多くの方が裸眼で生活できるほど視力が回復。視力検査では0.8〜1.2程度に到達することもあります。 |
| 3日〜1週間後 | 見え方の質がよりクリアに。違和感や乾燥感も軽減していきます。 |
| 1か月後 | 視力のブレが少なくなり、屈折の安定がほぼ完了。夜間のにじみやハロー・グレア(ハロー・グレア)も落ち着いてくることが多いです。 |
| 3か月〜半年後 | 精密な再検査で視機能の安定を確認。特殊なケースでは軽度の視力変動が続くこともあります。 |
一時的に気になる症状
術後は一時的に次のような症状が出ることがありますが、多くは時間とともに改善していきます。
- 光がにじんで見える(ハロー・グレア)
- ぼやけ・ピントのずれ
- 乾燥感やゴロゴロした違和感
- 薄暗い場所での見えづらさ
これらの症状はICLに限らず、レーシックやSMILEなど他の屈折矯正手術でもよく見られる経過です。
視力の「安定」とは?
ICL手術後の「視力が安定する」とは、次のような状態を指します。
- 裸眼視力が毎日ほぼ一定している
- 度数の変動がなく、眼鏡やレンズの調整が不要
- にじみや違和感が減り、見え方の質が落ち着いている
一般的には術後1か月前後が目安ですが、強度近視やドライアイ傾向のある方ではもう少し時間がかかることもあります。
見え方が不安定な場合の対応
次のような症状が続く場合は、早めに診察で相談してください。
- 視力が日によって大きく変わる
- 片眼だけ極端に見えにくい
- 視野の一部がかすむ・暗く見える
- 強いまぶしさや痛みがある
こうした症状の多くは一過性ですが、稀にレンズ位置のずれや眼圧上昇など追加対応が必要な場合があります。
長期的な視力維持と定期検診の重要性
視力が安定すると通院を怠りがちですが、ICLは眼内に人工レンズを入れる手術であるため、長期的な経過観察が欠かせません。
ICL特有の注意点として、以下のようなリスクが数年単位で起こる可能性があります。
- Vault(ボルト/レンズと水晶体のすき間)の変化
高すぎると眼圧上昇、低すぎると白内障の誘発につながる可能性があります。 - 角膜内皮細胞の減少
細胞が極端に減ると角膜の透明性に影響を与えることがあります。
これらのリスクは早期発見・早期対処で多くが予防可能であり、ICLの良好な長期成績を支えるためにも、定期検診は絶対に欠かせません。
ICL手術後の安静期間とスケジュール目安

ICL(眼内コンタクトレンズ)手術は、視力の回復が早い一方で、眼内にレンズを留置するため、術後は一定期間の安静が必要です。特に乱視用のトーリックICLでは、レンズがわずかに回転するだけで矯正効果が大きく低下するため、慎重な術後管理が求められます。ここでは、手術直後から日常生活への復帰までの流れを整理します。
視力の回復は早いが安静は慎重に
多くの方は翌日には裸眼で視力改善を実感しますが、レンズの安定には体の使い方や生活習慣が大きく影響します。術後は白内障手術と同様に、慎重に安静を保つことが重要です。
手術当日〜3日目の過ごし方
以下は日ごとの主な注意点です。
| 日数 | 過ごし方のポイント |
|---|---|
| 手術当日 | 視界のぼやけ・まぶしさ・異物感あり。帰宅後は安静に。洗顔・洗髪不可。入浴は首から下のシャワーのみ。水やほこりを避け、目をこすらないよう注意。点眼は指示通りに。 |
| 術後1日目 | 診察で状態を確認。多くの方が視力改善を実感。読書・スマホ・PCは控えめに。長時間の作業や外出は避ける。洗顔・洗髪・化粧・運動はまだ禁止。 |
| 術後2〜3日目 | レンズ位置の安定を妨げる可能性があるため、うつむき姿勢や激しい動作は避ける。乱視用ICLは特に安静が重要。点眼と清潔管理を徹底。 |
行動別:再開の目安と注意点
| 行動 | 再開時期の目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| デスクワーク(軽作業) | 翌日以降(推奨は術後3日目) | 連続作業を避け、休憩を挟む |
| 家事・散歩・ストレッチなど軽い運動 | 2週間以降 | 腹圧や眼圧上昇に注意 |
| 激しい運動(ランニング・筋トレ・球技) | 1か月以降 | レンズの安定を確認後 |
| 洗顔・洗髪 | 術後4日目以降 | 眼に水が入らないよう注意、 タオルで目を押さえずに拭く、髪を拭くときも優しく行う |
| 湯船入浴・サウナ | 1週間以降 | 温熱刺激は炎症や眼圧上昇のリスク |
| 化粧(特にアイメイク) | 1〜2週間以降 | 雑菌や摩擦による炎症を避ける |
| 飲酒 | 1週間以降 | 術後すぐは炎症や眼圧変動のリスク |
| コンタクト再使用(必要時) | 1か月以降 | 基本的には不要、医師の許可が必要 |
乱視用ICL(トーリック)の注意点
乱視矯正用のトーリックICLは、レンズの軸の向きがずれると効果が落ちます。以下を意識しましょう。
- 術後3日間は下を向いた姿勢や体を強く動かす動作を避ける
- 目を圧迫しない(枕で押さえない・就寝時の体勢に注意)
- 定期検診でレンズの向きを確認してもらう
紫外線対策と保護メガネ・サングラスの使い方
術後は光に敏感になるため、紫外線や物理刺激から目を守る工夫が必要です。
保護メガネ:術後3日間は就寝時も含めて使用し、無意識に目をこすることや圧迫を防ぐ。掃除や外出時、風の強い日も着用が望ましい。
サングラス:術後1週間〜1か月程度は屋外で着用推奨。紫外線をカットし、術後の違和感・ハロー・グレアを軽減できる。レンズの色は濃すぎず、UVカット機能付きで、グレーやブラウン系の色が適切。
点眼薬の使い方と注意点
ICL術後は抗菌薬・ステロイド薬・人工涙液など複数の点眼薬が処方されます。使用時の基本ルールは次の通りです。
- 清潔を保ち、手洗い後に点眼する
- 容器の先端がまつ毛や眼に触れないようにする
- 複数の点眼薬は5分以上間隔を空ける
- 点眼後は1〜2分軽く目を閉じるだけでよい
ICL手術後の症状とトラブル対応

ICL(眼内コンタクトレンズ)手術の後、「目やにが出る」「ゴロゴロする」「かすむ」などの症状に不安を感じる方は少なくありません。ICLは術後すぐに視力が回復することが多い手術ですが、眼内にレンズを入れる性質上、一時的な症状が出るのは自然な経過です。ただし、中には医師に相談すべき兆候もあります。ここでは代表的な症状とその見極め方を解説します。
一時的な「目やに」や「異物感」はよくある術後症状
術後の「目やに」について
多くの場合、術後の目やには異常ではなく、自然な反応です。手術による小さな傷の治癒や、処方される抗菌薬・ステロイド点眼の影響で、分泌物が増えることがあります。特に術後1週間以内は、涙や薬の成分が排出され、朝にまぶたが少し開けづらいと感じることも珍しくありません。
ただし、以下のような場合は感染などのサインである可能性があるため、すぐに受診してください。
- 黄緑色で悪臭のある大量の目やにが出る
- 急に強い充血が起きる
- 強い痛みや眼の奥の圧迫感がある
- 視界が白くかすむ、急に見えにくくなる
これらは術後眼内炎の可能性があり、放置せずに医師の診察を受けることが重要です。
異物感・ゴロゴロ感・軽い痛みについて
ICL手術では角膜に小さな切開を行うため、術後数日は「ゴロゴロする」「何か入っている感じがする」といった異物感を覚えることがあります。これは切開部が治癒している過程や、手術時に角膜や結膜が刺激を受けた影響によるものです。通常は数日〜1週間程度で自然に軽快します。
ドライアイ・見え方のかすみ・違和感の対処法

術後にドライアイが起きる理由
ICLはレーシックに比べ角膜神経への影響が少ないため、強いドライアイは起こりにくいとされています。それでも以下の要因により、一時的に乾燥やかすみを感じることがあります。
- 手術による涙液バランスの乱れや角膜の軽い傷
- 抗菌薬・ステロイド点眼の副作用
- 室内の乾燥やエアコンなどの環境要因
対策方法
- 処方された人工涙液を適切に使用する
- パソコンやスマホは1時間ごとに休憩する
- 室内を加湿し、風が直接目に当たらないようにする
- 医師の許可があれば、目を温めて血流を促す
これらの工夫で多くの症状は数日〜2週間程度で改善しますが、人によっては3か月ほど続くこともあります。
ICL手術後の見た目や顔への影響は?

ICL(眼内コンタクトレンズ)手術後、「顔が変わった」「雰囲気が変わった」と言われることがあります。この記事では、医学的な観点と心理的な側面から、ICL手術が見た目に与える影響をわかりやすく解説します。
「顔そのもの」は変わらないが、印象は変わることがある
ICL手術は眼内にレンズを入れる手術であり、顔や骨格を変えるものではありません。
しかし、視力の改善や生活の変化によって、目の開き方や表情が自然になり、周囲から「顔が変わった」と感じられることがあります。
「顔が変わった」と感じる4つの理由
1. 視力改善による目の開き方の変化
手術前は細かいものを見るために無意識に目を細めていた人も、術後はしっかりと目を開けられるようになります。
- 目がぱっちり見える
- 眠そう・鋭い印象がやわらぐ
2. メガネを外すことで印象が変わる
近視用メガネは目を小さく見せるため、外すと「目が大きくなった」と感じる方が多いです。
- 顔の輪郭やバランスが変わったように見える
- メイクが映える
3. 表情や自信の変化
視力回復により表情が自然になり、明るく見えるようになります。
- まばたきが自然になる
- 表情に自信が生まれる
4. コンタクトレンズによるストレスからの解放
長年のコンタクト使用で乾燥や異物感があった人は、装用ストレスがなくなることで表情がやわらぎます。
SNSや口コミで「顔が変わる」と言われる背景
SNSでよく見られる「顔が変わった」という感想には、次のような心理的・視覚的効果も関係しています。
- 自撮り写真で目が細めずに映るようになった
- メガネを外したことでメイクや表情が際立つ
- 周囲が変化に気づきやすくなる
つまり、「顔が変わる」というのは異常が起きたという意味ではなく、多くはポジティブな変化です。
実際に変わるのは「見え方」「目の使い方」「表情」
| 変化するもの | 内容 |
|---|---|
| 目の使い方 | 目を細める・寄せる負担が減る |
| 表情 | まぶしさや緊張が減り柔らかくなる |
| 印象 | メガネを外すことで顔のバランスが変わる |
| 写真写り | 自然な笑顔や目の開きで印象が良くなる |
「顔が変わる」ことへの不安は不要
ICLは整形手術ではなく、視力を回復させる医療行為です。
見た目の変化は自然な範囲であり、ほとんどの場合は「明るく見える」「表情が柔らかくなる」といった好意的な変化です。
ICLがズレるって本当?

ICL手術を検討する方からよくある質問が「レンズがズレたりしないの?」という不安です。
実際にICLが大きくズレるケースはまれですが、回転(回旋)や位置ずれ(偏位)、Vault異常(レンズと水晶体の距離不良)が起こると、見え方に影響が出ることがあります。ここでは、ズレの種類・原因・頻度・対応について解説します。
「ズレ」には3つの種類がある
ICLの「ズレ」には以下の3つの種類があります。それぞれ見え方やリスクへの影響が異なります。
| 種類 | 説明 | 影響 |
|---|---|---|
| 回転(回旋) | レンズが軸方向に回る | 乱視矯正効果が低下 |
| 偏位 | レンズが中心からずれる | 光のにじみ・ハロー・グレア |
| Vault異常 | レンズと水晶体の距離が広すぎ/狭すぎ | 白内障・眼圧上昇・違和感 |
回転(回旋)は乱視用ICLで重要
乱視を矯正するトーリックICLは、レンズの軸の角度が正確でないと矯正効果が低下します。
- 10度のズレ → 約30%矯正効果低下
- 30度のズレ → 効果がほぼ打ち消される
報告されている発生率(再手術率)
・Fudan大学(2022, BMC Ophthalmology):10,258眼中12眼(0.12%)が回転による再手術
・MICL Study 3(Staar Surgical, 多施設研究):トーリックICLにおける再手術率は0.6%
・Naif M. Sulaimani ら(2025, Int J Ophthalmol):813眼中27眼(3.32%)が回転などでレンズ調整または摘出。2眼(0.24%)がVault異常を伴い白内障手術に至ったと報告
多くの例で回転は1〜3%以下で、再調整や再手術で視力改善が可能です。
偏位(中心ズレ)の影響
非トーリックICLでは大きな問題になることはほとんどありません。ただし、光のにじみやハロー・グレアを感じる可能性があると報告されています。
Niuら(2022, Frontiers in Med):135人の解析で、ズレ量は平均0.2mm程度。
大きな視力低下はなかったが、ズレが大きいほど異常光視現象の訴えが多かったとされています。
Vault異常とそのリスク
Vault(ボルト)とは、ICLと水晶体のすき間のことです。
- 狭すぎる場合(Low Vault):水晶体に触れて白内障リスク
- 広すぎる場合(High Vault):虹彩に接触して眼圧上昇や違和感
Vault異常は回転や偏位を起こしやすくする要因でもあります。
・Fudan大学報告:Vault異常による再手術は0.10%
・MICL Study 3:Vault不適合による再手術率は約0.6%
・Sulaimaniら(2025):Vault異常がズレの一因となった例を複数報告し、サイズ選定エラーや術後回旋との関係を指摘しています
ズレが起こる原因(発生機序)
ズレの原因はひとつではありません。以下のような要因が複雑に絡み合います。
| 要因 | 説明 |
|---|---|
| サイズ選定の誤差 | 角膜サイズ(WTW)の測定ずれなどで適正サイズが外れる |
| Vault異常 | フィットが不安定になり回転や偏位が起きやすい |
| 虹彩の形状や収縮力 | 虹彩の動きがレンズを押すことがある |
| 術後の行動 | 強いこすり、うつ伏せ寝などで物理的に動く可能性 |
施設によるリスク差
再手術率は0.1〜3%と施設によって差があります。主な要因は以下の通りです。
- 測定機器の精度(OCTなど詳細な解析機器の有無)
- サイズ選定ロジック(AIによるVault予測かどうか)
- 乱視軸補正支援システムの使用有無(Verionなど)
- 術者の経験と調整技術
上記の報告をまとめると、全体の再手術率は0.1〜0.6%程度、トーリックICLではやや高くなります。
- 回転・Vault異常による再手術はICL全体で1%未満
- 原因の特定と再調整により、多くのケースで視力は改善可能
- まれに白内障摘出に至る重度例(0.2%未満)もあるが、ごく例外的
当院の取り組み
・最新OCTとAI予測による正確なサイズ選定
・トーリックICLでは術中ナビゲーションで精密に軸合わせ
・術後も定期的にVaultと位置をチェックし、長期的な安全性を確認
ICLをやらない方がいい人の特徴

ICL(眼内コンタクトレンズ)手術は非常に優れた視力矯正方法ですが、すべての方に適しているわけではありません。眼の構造や全身の状態によっては、手術を避けた方がよい場合もあります。ここでは、適応外となる条件と術前に確認しておきたい重要なポイントを解説します。
ICLを避けるべき(慎重に検討すべき)条件
以下のような方は、ICLを受けるには慎重な判断が必要です。
1. 前房深度(ACD)が3.0mm未満
- 基本適応:ACD(角膜内皮から水晶体前面までの距離)3.0mm以上(FDA基準)
- ACDが浅いと、レンズが水晶体や角膜内皮を圧迫し、白内障や角膜障害の合併症を引き起こす可能性があります。
(出典:FDA Approval Summary for EVO/EVO+ Visian ICL, P030016/S013, FDA公式文書)
2. 強度近視でもACDが浅いケース
近視が強いからといってACDが深いとは限りません。実際に、以下のような研究報告があります。
- 日本人若年層229名の調査では、近視の度数とACDには相関があるものの、ばらつきも大きい(R = –0.30~–0.37, P < 0.001)。
たとえば、–6Dの人でもACDが2.9mm以下のケースがあり、度数だけで判断できないことが示されました。 - 中国の大規模研究(3,438眼)でも、軸長が長く近視が強くてもACDが浅い例は一定数存在。
Vault異常やサイズ選定ミスにつながるため、近視度数にかかわらずACD測定が必須であると結論付けられています。
結論
「近視度数が高ければACDが3.0mm以上で安全」とは限らず、すべての患者で実測値を確認することが前提です。
3. 角膜内皮細胞が少ない
- 年齢に応じた基準を下回ると角膜障害や水疱性角膜症のリスクが上がります。
- 例:45歳以上では2075 cells/mm²以上が必要とされます。
(出典:FDA Approval Criteria, P030016)
4. 眼の炎症疾患の既往がある
- ぶどう膜炎などの既往があると、炎症再燃や後発白内障のリスクが高いため原則適応外。
5. 強い乱視・不正乱視がある
- トーリックICLで矯正できないケースもあり、角膜の歪みや不正乱視が強い場合はレーシックやオーダーメイド矯正が適することもあります。
レンズ選定に必要な検査とデータ
レンズサイズや軸の設定は、以下のようなデータをもとに行われます。
| 必須データ | 目的 |
|---|---|
| ACD | レンズを安全に入れるスペースの確認 |
| WTW(白目の幅) | レンズサイズ選定 |
| 虹彩の太さ | Vaultへの影響を確認(とくに小さい虹彩は注意) |
| 角膜内皮細胞数 | 長期的な角膜の安全性評価 |
- 近年ではOCTやUBM(超音波生体顕微鏡)による前眼部解析が推奨されています。
- 複数施設共同研究でも、精密解析を導入している施設の方が、Vault異常やサイズミスが少ないという報告もあります。
(出典:Wang X et al., Clinical Ophthalmology. 2025;19:1007–1016.)
医師と相談時に確認すべきポイント
- 自分のACDと近視度数(–6Dや–10DでもACDが浅い例あり)
- ICLが本当に適応かどうか
- トーリックICLを使う場合、回旋リスクやズレ時の対応体制
- 長期的なVault測定・定期検診の体制
加齢によるVault変化とリスク
ICLを装着後、Vault(レンズと水晶体の間のすき間)は年々少しずつ減少していくという報告が複数存在します。これは、加齢による水晶体の厚み増加や最初にVaultが高い場合ほど減少幅が大きいなどの要因によるものです。
Vaultはどれくらい減るのか?
- OCTによる6年追跡(133眼)
術後6か月までに平均約71 μm減少(510 → 439 μm)、以後は月にわずか2 μmずつ減少し緩やかに安定傾向 - ICL V4c(169眼)の多施設研究
特にACDが浅い・強度近視(レンズ度数が高い)症例で減少幅が大きいと報告されています
Vaultが減ると何が問題になるのか?
- 90µm未満:レンズが水晶体に接触し、前嚢白内障リスクが高まる
- 750µm以上:虹彩接触・炎症・眼圧上昇などによる合併症リスク
Vaultが合わなくなったら、どうするの?
Vaultが明らかに適正範囲から外れた場合、以下のような対応が考えられます。
- 抜去またはタイプ交換:白内障リスクや角膜障害がある場合
- レンズ取り外し:Vaultが極端に高く、急激な変化がある若年者など
判断基準
- 水晶体の厚みの変化(加齢)
- Vaultの急激な低下
- 白内障兆候や角膜変化
これらを総合して医師が抜去・交換の時期を判断します。
よくある質問

Q1. 手術後、いつからメガネは不要になりますか?
多くの方は翌日から裸眼で生活できる視力になります。
- 術翌日に0.9〜1.2程度の視力が出ることも少なくない
- 乱視が残る場合や夜間ににじみ・まぶしさがある場合は一時的にメガネを併用することもあり
- 見え方が完全に安定するまでに1週間〜1か月かかる場合がある
基本的に裸眼生活が可能になりますが、「乱視が強かった方」や「もともと不正乱視がある方」では、必要に応じてメガネを併用することがあります。
Q2. 保護メガネはいつまで着ける必要がありますか?
最低でも術後1週間、できれば2週間程度の装用がおすすめです。ICL術後は外部からの刺激や接触を防ぐために、保護メガネの着用が推奨されます。
- 日中:術後3日間は外出時も着用(風・ホコリから保護)
- 夜間:術後1〜2週間は必ず着用(寝ている間のこすり防止)
- トーリックICL:回旋防止のため、2週間装用が基本
Q3. 術後の点眼薬(目薬)はいつまで必要ですか?
以下は一般的な目薬の例と使用スケジュールです(※クリニックごとに異なる場合があります)。
| 目薬の種類 | 主な目的 | 使用期間と回数(目安) |
|---|---|---|
| 抗菌薬 | 感染予防 | 1日4回/約1週間 |
| ステロイド薬 | 炎症・腫れを抑える | 1日4回→徐々に減量し約4週間 |
| 人工涙液 | 乾燥予防 | 必要に応じて数週間〜1か月以上 |
※まれに、眼圧を一時的に下げる点眼(緑内障用)を術後1〜2日使用することもあります。
自己判断で中止せず、医師の指示どおりに使用することが大切です。
Q4. ICL手術の4日目から洗顔はできる?
はい、洗顔は4日目から可能です。
- 眼に水が入らないよう注意
- タオルで目元を押さえず、優しく拭く
- 髪を拭くときもこすらないよう慎重に
Q5. 術後に飲酒はいつから大丈夫?
1週間以降が目安です。術後すぐの飲酒は炎症や眼圧変動のリスクがあるため控えましょう。
Q6. 保護メガネとサングラスは両方必要?
はい、目的が異なるため両方の使い分けが望ましいです。
- 保護メガネ:物理的刺激・こすり防止(術後3日間程度)
- サングラス:紫外線対策・ハローやグレア軽減(術後1週間〜1か月推奨)
まとめ

ICL手術では手術当日から「よく見える」と感じる方も少なくないですが、それはあくまで「見え方」の話であり、眼の中ではまだレンズが完全に安定していません。特に術後3日間の過ごし方が視力の安定に大きく影響します。
1. 適切なケアでトラブルを未然に防ぐ
ICLは眼内に人工レンズを入れて固定する手術です。レンズが回転(回旋)や偏位を起こさないためには、この期間の安静が重要です。特にトーリックICL(乱視矯正用)は早期のレンズ安定が視力に直結します。
術後3日間の注意点
- 眼をこすらない
- うつ伏せ・横向きで寝ない
- 運動や飲酒を控える
- シャワーや洗顔は慎重に行う
2. 不安があればすぐに眼科へ連絡を
次のような症状があれば、放置せずに受診してください。
- 目がゴロゴロする
- かすんで見える
- 視界に線が走る
ICLは安全性の高い手術ですが、長く快適に使うためには術後のチェックが欠かせません。特にVault(レンズと水晶体のすき間)は加齢などで変化するため、年1回の検診で経過を確認しましょう。
3. 「完全回復」を目指すために生活習慣にも注意を
手術が成功しても、その後の生活が乱れていれば、炎症・ドライアイ・見え方のトラブルの原因になります。
- 睡眠をしっかり取り、体の回復を促す
- スマホ・PCの使用時間を控え、目を休める
- 目薬は指示どおりに使用する
- 術後数日はサングラスや保護メガネ着用推奨
全体を通して「3日間の過ごし方」「症状があるときの連絡」「生活習慣への配慮」の3点を押さえておくと、ICLの効果を最大限に活かし、安全に視力を安定させることができます。
ICL術後の視力は適切なケアで長く保てます。この記事を参考に3日間の生活習慣を整え、安心して裸眼生活を楽しみましょう。
引用文献
1. Naif M. Sulaimani et al. Posterior chamber phakic intraocular lens adjustment – causes and outcomes. Int J Ophthalmol. 2025;18(5):883–888.
2. Niu L et al. Decentration and tilt of EVO ICL and their impact on optical quality. Front Med (Lausanne). 2022.
3. Wang Y et al. Clinical outcomes and complications of ICL implantation in a large cohort. BMC Ophthalmology. 2022.
4. Staar Surgical. MICL Study 3 Data. Presented 2022.
5. Sammouda H et al. Impact of Toric ICL misalignment on visual outcomes. J Refract Surg. 2021.





























