白内障手術は、濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズに入れ替えることで視力を回復させる手術です。
手術時間は10〜20分程度で、多くの場合日帰りで受けられます。
ここでは、手術の目的・仕組み・具体的な流れ・手術方法の違い、そして受けるべきタイミングについて、わかりやすくご説明します。
● 手術の目的と効果
白内障は、水晶体が白く濁ってしまうことで、視界がかすんだり、まぶしく感じたり、眼鏡でも視力が出にくくなる病気です。
白内障手術の目的は、この濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズ(IOL)に置き換えて、明るくはっきりとした視界を取り戻すことにあります。
手術後、多くの皆様が次のような改善を実感されます:
- 視界が明るくなる
- 色の見え方がはっきりし、鮮やかに感じられる
- 眼鏡の依存度が減る
- 読書や運転、買い物など日常生活が快適になる
● どのようにして視力を回復させるのか(手術の流れ)
白内障手術は、以下のようなステップで行われます:
① 角膜切開
角膜(黒目のふち)に2〜3mmの小さな切開を行い、手術器具を挿入する通路を作ります。
② 水晶体嚢の前嚢切開
水晶体は「水晶体嚢(のう)」と呼ばれる透明な膜に包まれています。
その前方部分(前嚢)を円形に切り取って開口部を作ることで、中の濁った水晶体にアクセスできるようにします。
③ 核分割
水晶体の中心部にある硬い「核」を、細かく砕いて分割します。
④ 核・皮質の吸引
砕いた核と周囲の柔らかい皮質を吸引して、眼の中をきれいにします。
このとき水晶体嚢のうち、前嚢以外は温存します。そこに人工レンズを固定します。
⑤ 眼内レンズの挿入
選定した人工眼内レンズを折りたたんだ状態で挿入し、眼内で自然に広げて固定します。
この眼内レンズには、以下のような種類があります:
- 単焦点レンズ(遠方・中間・近方いずれかに焦点を合わせる)
- 多焦点レンズ(複数の距離を同時に見やすく設計)
- 焦点深度拡張型レンズ(EDOF)(遠方〜中間距離をなめらかにカバー)
- 上記のレンズに乱視矯正機能が付いたレンズ
患者さま一人ひとりのライフスタイルや見え方の希望に応じて、最適なピント設定とレンズ選びを行うことで、日常生活の質(QOL)が大きく向上します。
● より良い見え方のために大切なこと
白内障手術では、水晶体の濁りを取り除くだけでなく、「どれだけ正確にピントを合わせられるか」=屈折精度の高さも非常に重要です。
▶ 単焦点レンズの焦点距離設定はライフスタイルに合わせて
現在も多くの皆様が選択される単焦点眼内レンズは、原則として1か所にピントが合う構造ですが、
当院では、単に「遠くが見えるレンズ」にするのではなく、皆様の生活スタイルに応じた焦点距離の設定を行っています。
- 運転や外出を重視する方 → 遠方重視
- パソコンや家事を中心にした生活 → 中間距離重視
- 読書や手元作業が多い方 → 近方重視
- 左右の眼で焦点距離をずらす「マイクロモノビジョン」も選択肢のひとつ
▶ 屈折精度とは?
屈折精度とは、眼内レンズを挿入した後に、どの程度ピントが的確に合っているかを示すもので、視力の質を大きく左右します。
手術の際には、術前に精密な検査と計算を行い、眼の状態に最も適したレンズ度数を決定します。
この誤差が小さいほど、手術前に皆様と相談した焦点距離が術後に叶えられ、希望された快適な生活を送ることができます。
▶ 乱視の矯正も見逃せないポイント
乱視がある場合、そのまま放置すると視界がにじむ・ぼやける・二重に見えるなどの問題が残ります。
当院では、乱視の程度に応じて**トーリック眼内レンズ(乱視矯正機能付きレンズ)**を使用することで、術後の視力をより安定させることが可能です。
こうした屈折精度・乱視矯正・焦点設計の3点が適切に行われることで、手術後の生活は「ただ見える」から「自然に快適に見える」へと変わります。
● 手術方法の違いと当院の特長:フェムトセカンドレーザー手術を全例で採用
白内障手術では、手術機器や技術により主に2つの方法があります:
▶ 一般的な超音波手術(Phaco法)
超音波振動を使って水晶体を砕き、吸引する現在の標準技術です。多くの施設で行われており、熟練の術者であれば非常に安全性の高い手術です。
▶ フェムトセカンドレーザー手術
フェムトセカンドレーザーは、1兆分の1秒単位で照射される極めて高精度なレーザーです。
このレーザーを使って、角膜切開・前嚢切開・核分割を自動かつ精密に行うことができます。
- 手作業では難しい円形の正確な前嚢切開が可能
- 水晶体分割の負担が減り、チン小帯や角膜へのダメージが少なくなる
- 術後の見え方の再現性が高まる
★ 当院の特長
当院では、このフェムトセカンドレーザー手術をすべての皆様に標準で導入しています。
多くの施設では自由診療扱いとなるこの高度な技術を、当院では術後の安全性・正確性・長期的な視機能の質を重視して、全例に適用しております。
単焦点レンズや厚生労働省未認可の眼内レンズの使用をご希望の場合には自由診療となります。
● 手術を受けるべきタイミングとは?
白内障手術は、「急いで受けなければならない病気」ではありませんが、**生活に支障が出てきた段階が“手術の適切なタイミング”**です。
次のような症状がある場合は、一度ご相談ください:
- 眼鏡を変えても視力が出にくい
- 夜の運転がまぶしく感じて怖い
- スマホや新聞の文字が読みにくくなった
- 色が全体的ににごって見える
- 段差や階段が見づらく、つまずきやすい
手術をすぐに受ける必要がない場合でも、以下のような生活上の工夫で不自由を軽減できます:
- 眼鏡の度数調整
- まぶしさ対策としてのサングラス・遮光眼鏡
- 室内照明の調整や読書灯の活用
- デジタルデバイスの文字サイズ・コントラスト設定の変更
これらを取り入れながら、見え方と生活の質のバランスを保ちつつ、最適なタイミングでの手術をご提案いたします。
白内障手術は、見える喜びを取り戻すための確かな一歩です。
当院では、最新技術と丁寧なカウンセリングにより、皆様が安心して治療を受けられる体制を整えております。
不安な点はどんなことでもお気軽にご相談ください。





























