レーシック・SMILE・ICL手術から10年後に視力が落ちるのはなぜ?この記事では、加齢による変化やVAULTの影響、再手術やICL再挿入などの対処法を詳しく解説します。
手術から10年後に視力が下がる理由とは?

手術後しばらくは良好な視力を維持していても、10年ほど経つと視力が少しずつ落ちてくる方が一定数いらっしゃいます。
その原因としては、以下のようなことが考えられます。
大きな原因は年齢による変化
- 加齢による水晶体の変化:目の中のレンズ(水晶体)は、年齢とともに少しずつ厚くなっていきます。その結果、屈折(ピントの合う位置)がずれてくることがあります。
- 核性白内障の初期段階では、近視化(近くは見やすいが遠くが見えにくくなる)が起こりやすくなります。
- レーシックやSMILE後の場合、角膜の形が変わっているため、加齢による影響が見え方に現れやすくなることがあります。
- ICL(眼内コンタクトレンズ)後は、角膜を削らないので角膜からの変化はありませんが、やはり水晶体の厚みが増すことで「VAULT(Vault)」と呼ばれるICLと水晶体の距離が減っていき、視力に影響することがあります。
※VAULT(ボルト)とは:眼内に挿入したICLと、水晶体のあいだの距離を指します。
手術後にコンタクトレンズは使えるの?

「手術したらコンタクトはもう使えない」と聞いたことがあるかもしれませんが、多くの方が使用できます。
では、なぜ「使えない」と言われることがあるのでしょうか?
レーシックやSMILEのような角膜の形を変える手術では、術前と形が変わることで、従来のレンズが合いにくくなるケースがあります。
特に、強い乱視や角膜のゆがみがある場合は、レンズのフィッティング(装着具合)に注意が必要です。
実際にはどのようなコンタクトが使えるの?
- ワンデータイプのソフトレンズ:軽度の度数調整に向いています。
- RGP(ハードレンズ):角膜の不正がある場合や乱視が強い方に適しています。
ICL手術後でも、角膜の形は変わらないため、コンタクトの使用は比較的スムーズです。
コンタクトが合わないときはどうすればいいの?

① メガネを使う
安全で手軽な方法ですが、視力のズレが大きい場合や、片眼だけのズレがある場合は、目が疲れやすくなることもあります。
② ICLを入れるという選択肢
レーシックやSMILEを受けた後に、視力が戻ってしまった方に対して、追加でICLを挿入する方法があります。
これは度数の大きな補正が必要な場合に有効です。
安全性はICL単独手術と同じで、実際に多くの方が視力の改善を実感しています。
視力回復トレーニングで戻せる?

「視力回復トレーニング」と呼ばれるものがありますが、医学的に視力(屈折)を恒久的に改善できる根拠はありません。
一時的にピントを合わせる力(調節力)を高める効果はあるかもしれません。
しかし、視力そのものを根本的に回復させることは難しいとされています。
現実的には、メガネ・コンタクト・再手術といった方法での対応が基本となります。
再手術はできるの?リスクは?

可能な場合
レーシック後に視力が戻った場合は、フラップを開けずに行うPRK(表層矯正)という方法で微調整をするケースが増えています。
SMILE後も、PRKで再矯正が可能です。
リスクについて
再手術では「視力のぼやけ」「光がにじむ」「片眼だけ満足できない」などのリスクがあります。
また、ドライアイがある方では、症状が悪化することもあります。
手術前の状態や症状をしっかり評価したうえで判断することがとても大切です。
術後によくある症状とその対処法

- 片目だけぼやける:視力ズレ、乾燥、角膜のゆがみが原因のことがあります。再検査で状態を確認し、メガネや点眼で改善する場合もあります。
- 夜間の光がまぶしい(ハロー・グレア):光のにじみや散乱が気になることがあります。夜間用メガネや瞳孔の動きをコントロールする点眼で対処することも可能です。
- 生活での注意点:長時間パソコンやスマホを見るときは、20分おきに20秒間、20フィート(約6m)先を見て休む(20-20-20ルール)など、目を休める工夫が効果的です。
ICLのVAULTってなに?どんなことに気をつければいいの?

VAULT(ボルト)とは、ICL(眼内コンタクトレンズ)と水晶体(天然レンズ)の間の距離を指します。
なぜ重要なの?
この距離が狭すぎると水晶体に接触して白内障の原因になったり、広すぎると目の水の流れが妨げられて眼圧が上がることがあります。
どれくらいが理想?
術後1〜3か月で 450〜500 µm が目標値です。
長期的には、加齢により水晶体が少しずつ厚くなっていくため、VAULTは自然に下がっていきます。
そのため、手術直後は中間値(450〜500 µm)にしておくのが安全と考えられています。
定期検診がとても大切です
VAULTの変化は自覚しにくいため、年に1回以上のAS-OCT(眼内の断層検査)でモニタリングを行いましょう。
目の状態にあったICLを適切に保つことが、長期的な安全と良好な視力につながります。
よくある質問

ブランド名よりも「自分の目に合った設計」が重要です。ワンデータイプ、ハード、スカラルなどから、専門家と一緒に選びましょう。
合っていないレンズや長時間の使用、ケア不足があるとリスクは高くなります。定期的な検査と正しい使い方が大切です。
状況によります。軽度な度数のズレなら再手術(PRKなど)、角膜の厚みが少ない方や強い近視の方はICLの方が安全なこともあります。
日常生活に支障が出るだけでなく、ICLの場合はVAULTの異常を見逃すリスクもあります。定期検診での早期発見が何より大切です。
まとめ 〜10年後の視力低下にどう備えるか

10年後に視力が落ちる可能性はゼロではありませんが、多くの場合はメガネやコンタクトでカバーできます。
再手術やICLによる再矯正など、適切な対応手段は複数あります。
特にICLの方は、VAULTの経年変化(加齢による水晶体肥厚)に注意し、450〜500 µmを目標値として定期的にチェックすることが重要です。
焦らず・放置せず・定期的にチェックすることが、快適な視力を維持するための第一歩です。
レーシックやSMILE、ICLの手術後は、年齢や目の状態の変化によって視力が少しずつ変わることがあります。多くの場合、メガネや再矯正、ICLの調整などで十分に対応できます。定期検診を続けて、これから先も安心して快適な視界を守っていきましょう。





























